2025年3月 / グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境
グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境 2025年3月号
作成基準日:2025年3月14日
市場見通し
- 米国と他国間での貿易戦争激化懸念に代表される政治的な不透明性の拡大によって、経済成長に対する堅調な見通しとインフレ鈍化のトレンドが変化する可能性があり、幅広い資産クラスを注視している。
- 米国景気にやや陰りが見られる一方、関税の影響があるものの欧州や中国に対するセンチメントは財政支出期待を背景に改善している。メキシコやカナダなど米国の政策の影響をより直接的に受ける国は相対的にリスクが高い。
- 金融政策は緩和的な一方、混乱を引き起こしている米国の貿易政策は、現時点でインフレへの影響が不透明なものの景気下支えを目的とした中央銀行による更なる緩和行動を迫る可能性がある。
- グローバル市場にとって主なリスクには、貿易戦争激化による景気やインフレ再燃への影響、中銀の政策ミス、地政学的緊張が含まれる。
資産別ポジショニング

市場テーマ
米国の王座陥落か
米国株式市場は過去2年にわたり好調な環境が続いてきましたが、2025年に入り、欧州株式や中国株式が、米国株式を上回る展開となっています(図表1)。欧州においてはロシア・ウクライナ戦争の解決が近いとの楽観論、国防支出拡大の論議、米国の関税が予想より軽微であるとの期待を背景に市場心理が改善しています。一方、中国株式は中国のAI新興企業DeepSeekの台頭をきっかけに、それまで低迷していたテクノロジー銘柄を中心に上昇が加速しています。長期の構造的問題は依然存在し、欧州、中国市場も関税による下振れリスクがあるものの、バリュエーションは米国株に比べてなお割安で、米国内外の成長格差が縮小している点もそうした見通しを支えています。こうした状況を背景に、米国以外の市場に対するエクスポージャーを高めることが有効だと考えています。
目的達成のための手段とは
規制緩和や減税といった成長促進的な政策の潜在的インパクトを織り込んだ、米大統領選後の「トランプ・ラリー」から一転して、足元では貿易や地政学的政策のマイナス面が懸念される展開となっています。関税の発動と撤回を繰り返す米国政府の対応が市場の混乱を招き、投資家は景気やインフレへの影響を測りかねています。抑制されたインフレ環境と堅調な米国景気の両立に対する実現見通しは変化し、最近の米国の経済指標は政策関連の懸念の高まりを反映して軟調な数字が続いています(図表2)。意図的であるか否かに関わらず不透明な状況が長引くと政策当局、企業、消費者の行動に実際に影響を及ぼし始めるでしょう。そのため、目先的には一段と慎重姿勢を維持しつつ、ボラティリティの高まりが予想される中で投資機会を伺うことが重要だと考えています。
不確実な投資環境を生き延びる方法
トランプ政権の政策をめぐる楽観と悲観の交錯のせいからか、このところ、日米の株価が月替わり、あるいは月の途中でも方向が急遽正反対に変わるような相場が続いてきました(図表3)。特に2月後半以降は、企業の景況感や消費者の信頼感とともに市場のセンチメントが急速に冷え込んでいます。ただし、これが本格的な弱気相場への転換の始まりなのか、長期上昇相場の一時的な調整局面に過ぎないのか、判断するには時期尚早であり、そうであるが故に、債券も含めて極めて不確実性の高い、確信をもってポジションを傾けにくい相場環境だといえます。この不確実性は日銀や米連邦準備制度理事会(FRB)などの中央銀行の金融政策にも制約を与えているといえそうです。こうした状況下のポートフォリオ運用においては「得点を稼ぐ」よりは「失点を避ける」ことが肝要と考えられるため、不要なリスクを極力抑制することに意を注いでいます。

アセットクラス・ポジショニング

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