2025年3月 / インサイト

変化の渦中にある世界では、ファンダメンタルズを重視したアクティブな銘柄選択が重要

サマリー

  • 経済の見通しおよび選好される銘柄が多岐にわたる不透明な投資環境下、米国株式市場では、クオリティの高い「耐久性のある成長企業」が最も優位性の高い立場にあると見ています。
  • 毎年高い収益率を上げて、株主の資産価値を継続的に増やし続ける企業は、あまり多くありません。
  • これを実現した企業、つまり当社が「耐久性のある成長企業」と呼ぶ企業は、フランチャイズのクオリティが高く、競合他社には模倣が難しい長期的に持続可能な優位性を有する傾向にあります。

世界のマクロ経済および地政学的状況の見通しは、2025年に入っても、依然として大きな変化の渦中にあります。米国では政権交代と政策の不透明感が目先の市場見通しへの懸念を増大させています。こうした環境下では、魅力的なリターンを生み出しつつ、ある程度の下方硬直性を提供できる銘柄を発掘するのが難しくなってきています。

投資環境が厳しさを増すなかで、最善のアプローチは、クオリティが高く耐久性のある成長企業を見出すように努めることだと考えています。このような企業の特性として、継続して二桁台の利益成長を達成してきた実績、粘着性の高いインフレが長期化した場合にコスト上昇を転嫁できる価格決定力、貿易戦争が激化した場合に関税の影響を免れる可能性があることなどが挙げられます。

資産価値を継続的に増大させる企業はまれ

当社の経験上、毎年高い収益率を上げて、株主の資産価値を継続的に増やし続ける企業は、あまり多くありません。ほとんどの企業は長期的な資産価値の創出が不安定もしくは劣後しており、これらの企業は市場・経済環境次第で業績が左右される傾向にあります。

クオリティの高いフランチャイズを有する企業は、競合他社には模倣することが難しい長期的に持続可能な優位性があると考えています。

クオリティの高い耐久性のある成長企業を特定

これらの特性として、寡占などの優位性の高い業界構造、先進的イノベーション、高いブランド認知、顧客ロイヤルティ、販売ネットワーク、データ活用などが挙げられます。こうした特性を備える企業は、一般的に、資本集約度が相対的に低く、継続的な需要の伸びが価格決定力を支える業種において最もよく見られます。耐久性のある成長企業は様々なセクターに存在しており、金融、一般消費財・サービス、コミュニケーション・サービス、ヘルスケア、情報技術などのセクターにまたがる投資機会があります。

伝統的な電気通信、公益事業、石油やガスの探鉱・生産、コモディティなど資本集約度の高い業界では、優れた耐久性のある成長企業はあまり見られません。これらの企業は、固定費が大きいコスト構造のため景気感応度が高くなりがちで、多くの場合、利益がコモディティ価格に左右されます。結果として、通常、安定した収益や投下資本利益率(ROIC)をもたらしません。

一方、一部の高成長企業は、企業の「Sカーブ」1のライフサイクルのうち初期段階で多額の投資を行うことから、収益やフリー・キャッシュフローがマイナスとなる場合もあります。また、前述の耐久性を著しく欠いている場合、急速なイノベーションや熾烈な競争に対して脆弱であり、競争から脱落する可能性さえあります。

ファンダメンタルズを重視する理由

耐久性のある成長企業は、主な財務上の特性として、継続的に高いROICを享受しています。ROICは、経常的に発生する収益(リカーリング(継続課金)型の売上など)、高い粗利益率、市場におけ高い優位性を背景とした価格決定力が組み合わさって生み出されます。重要な点として、耐久性のある成長企業は、予測可能かつ安定した営業キャッシュフローを背景に、歴史的に景気後退局面でも比較的良好な業績を上げる傾向があります。収益は景気動向に左右されにくく、不確実性が高い時期にも、より安定的な業績をもたらす可能性があります。この「売上高の景気感応度が低いこと」は、市場における支配的な立場や強力なブランド・ロイヤルティに起因するものです。そのため、耐久性のある成長企業は、景気後退による影響を免れる可能性があります。

耐久性のある成長企業には、他にも、経営陣のクオリティと経営資源の集中に関連する特性を有します。規律ある資本配分とフリー・キャッシュフローの効率的な活用を実証してきた経営陣は、耐久性のある成長企業を見極める上で重要な要素です。

耐久性のある成長企業の例

 

今後の課題に備える企業

米国の政策変更による混乱のため、経済の見通しのブレ幅が大きくなる不透明な投資環境となり、目先の株式市場が持続的に上昇することは難しいと思われます。幅広いマクロ経済や政治面における多種多様なリスクが存在するにもかかわらず、市場のバリュエーション水準は割高です。このため、目先約1年間は、より不確実性の高い期間となるでしょう。そうした環境下、企業収益は悪化しやすく、一部の企業は売上成長に苦戦する可能性があります。

耐久性のある成長企業は、こうした目先の環境を乗り切る態勢が最も整っていると考えています。これらクオリティが高く耐久性のある成長企業は、リカーリング型の売上、高い粗利益率、業界における高い優位性、低い資本集約度などを基盤としています。さらに、これらの強力なフランチャイズ銘柄の多くは、長期的な本質的価値および市場全体と比較して、相対的に魅力的な株価水準で取引されているという事実を加えれば、これらの企業は特に投資妙味があると評価しています

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