2024年10 月 / グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境
グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境 2024年10月号
作成基準日:2024年10月15日
1. 市場見通し
- インフレ率が各国の中銀目標に近づく中、経済指標は底堅さを見せており、一段の緩和余地がある。
- 米国はインフレ率が低下する中、経済指標は底堅く推移し、景気のソフトランディングを裏付けている。欧州経済は低位横ばいが続き、製造業が不振な半面、サービス業が下支えしている。日本経済は輸出にけん引されて年初のマイナス成長から回復。中国政府は景気のテコ入れのために積極的な行動に踏み切る。
- 米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ軌道は今後のデータ次第で、欧州中央銀行(ECB)はインフレ指標を手掛かりに緩和を進める公算。日本銀行は他の中銀とは対照的に利上げ路線を歩む姿勢を示している。中国は景気を下支える広範な刺激措置の一環として利下げを実施した。
- グローバル市場の主なリスクは、高まる地政学的緊張、迫る米国大統領選挙、金融政策ミスの可能性、中国の成長軌道などが挙げられる。
2. 市場テーマ
中国は困難を乗り越えたか
中国政府が景気悪化に歯止めをかけ、低迷する不動産市場に対する懸念を鎮めるために、予想以上に大規模な景気刺激策を発表して以来、中国株市場は30%近く急騰しています(図表1)。中国人民銀行と金融規制当局の協調行動は、住宅市場下支えのための利下げや自社株買い促進のための融資など金融、財政の垣根を越えて幅広い分野に及びます。今年は景気失速に歯止めがかからず、成長率が政府目標である5%を大きく下回り、中国株は他の市場に大きく後れを取ってきました。米国の政策転換のリスクもあるなか、輸出依存度の高い同国経済はより一段と下押し圧力を受ける可能性があります。従って、広範囲に及ぶ今回の措置は正しい方向への第一歩であり、新興国市場への投資家に歓迎されましたが、中国が直面する構造的な逆風は極めて強く、窮地を脱したと言い切るにはまだ早いかもしれません。
ソフトランディング実現に影を落とす再インフレ懸念
2022年9月のピークに11%まで上昇していたユーロ圏のインフレ率は、ECBが目標とする2%を下回り、利下げ余地が広がりました(図表2)。これはインフレが同様に目標に向かって低下する他の中銀にとっても朗報です。世界経済が底堅く推移し、一部の地域は驚異の粘り腰を見せている状況でこうした進展が見られたのは特筆すべきことです。新型コロナウイルスによるサプライチェーンの遮断、家計支出を支えてきた過剰貯蓄、サービス・インフレを押し上げた繰延需要など物価を押し上げた要因は下火になってきました。あらゆる指標から見て、以前は考えられなかった「ソフトランディング」の実現に中銀は成功したように思われます。しかし、残念ながら、地政学的緊張と米国の政策転換が景気に影響を及ぼし、場合によっては再びインフレ懸念を呼び起こす恐れがあるため、引き続き注意が必要です。
日本株を取り巻く環境は悪くない?
日本株については、ガバナンスや資本効率の改善が日本企業の利益率向上に結び付くとの長期的な見方から、もともと有望視していました。さらに、7月以降米国の超大型テクノロジー銘柄以外へのリターンの分散が続く中、世界的に景気循環型バリュー株への資金回帰の兆しが見え、8月初めの急落後の戻りの鈍さから他国市場との比較で割安感が高まっていた日本株にもその流れが波及する可能性があるとみています。また、①国内では岸田政権末期の行き詰まり感や日銀の追加利上げへの警戒感が日本株の逆風となっていましたが、自民党首脳人事と衆院解散・総選挙を経て、結果はどうあれ決着するであろうこと、②ひと頃の円高進行から足元再び円安傾向に回帰したことによる為替リスクの減退、③中国株が、景気刺激策の発表を受けた期待先行の急騰から足元は急反落に転じており(図表3)、同地域における流出資金の受け皿としても日本株が有望視されること、などが当面の日本株のポジティブ材料だと考えています。
3. 各国・地域の経済環境
4. ポートフォリオ・ポジショニング
- 株式は小幅なオーバーウェイトを継続。依然バリュエーションが割高な分野も見られるが、利下げ見通しと米国景気の底堅さを評価。
- 各国中央銀行が金融緩和に転じるなかで、これまでのテクノロジー銘柄への一極集中から、より広範な銘柄への裾野拡大が期待される。特にファンダメンタルズや為替の恩恵が期待される日本株のオーバーウェイト幅を拡大。
- 債券はアンダーウェイトを維持、キャッシュは若干のオーバーウェイトに引き上げ。キャッシュを待機資金として保持し、市場環境の変化に備えた流動性を確保。米国利下げに備えて、金利敏感なアセットクラスは注視。
- 債券資産内の配分ではファンダメンタルズが総じて良好で利回りが魅力的なハイイールド債を引き続き選好。
- 一方、主要国のインフレ鈍化を受けてインフレ連動債のオーバーウェイト幅を縮小し、日本株とキャッシュに振り向け。
5. アセット・アロケーション・コミッティのポジショニング
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