2024年9 月 / インサイト
モンテカルロ分析はいかにリタイアメント・プランの改善に役立つか
ほとんどの投資家は満点よりも高スコアを目指すべき
サマリー
- モンテカルロ・シミュレーションは、投資家が様々な市場環境に照らしてリタイアメント・プランを検証することに役立ちます。
- 一般的にアドバイザーは、満点に至らないまでも高めのスコアを目指すことを投資家に推奨しています。
- これらの分析を定期的に実施し見直すことで、投資家は退職に向けた準備を計画的に進めることが可能になるでしょう。
退職後の期間が30年以上続く可能性があるという前提での市場パフォーマンスについて言えば、将来何が起こるかを正確に知ることは不可能です。ファイナンシャル・アドバイザーが将来の見通しに関する質問に答える際には、多くの場合、モンテカルロ分析をはじめとする確率モデルを採用したプランニング・ツールを活用します。この種の分析は、個人のリタイアメント・プランの設計においても特に有益です。
モンテカルロ分析とは何か?
モンテカルロ分析は、不確実な事象に関して起こり得る様々な結果をシミュレーションする手法です。ファイナンシャル・プランニングにおいてこの分析は、個別のリタイアメントプランの実行可能性を様々な市場環境や投資結果に照らして検証することに役立ちます。
次に、モンテカルロ・シミュレーションでは、その結果を、退職後の想定期間終了時に資金が残存しているというシナリオが発生する割合(0~99%)として表示します。例えば、シミュレーションでモンテカルロ・スコアが「80」という結果が出た場合、同期間終了時に1ドル以上の資金が残存しているシナリオが全体の80%を占め、資金が枯渇してしまうというシナリオが全体の20%を占めることを意味します。
一方、その他のタイプのリタイアメント・プランを設計する際には、退職後の想定期間中は常に年間収益率が変動しない(例えば、7%に固定)と仮定する場合があります。
平均収益率を織り込むことは重要ですが、このアプローチでは、市場リターンが毎年プラスであると仮定しているため、例えば市場パフォーマンスが振るわない期間の影響が考慮されていません。
スコアの意味を理解する
投資家はモンテカルロ分析で特定のイベントが発生する確率または成功率が最も高い数値であることが望ましいと思うかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。これらの投資家は、退職後の支出増大や早期退職、またはその両方をアドバイザーから提案されると、驚くかもしれません。数十年にわたり貯蓄に専念した後、その資金を使うことに抵抗を感じる投資家もいます。ところが、自分たちが思う以上に退職後の生活を楽しむことができる場合もあります。
ティー・ロウ・プライスのリタイアメント・アドバイザーは、通常、満点に至らないまでも高めのスコアを目指すことを推奨しており、多くの場合、80%~95%の範囲に信頼スコアが収まることを目指すよう推奨しています。同時に、低スコアまたはスコアの下落が見られても、悲観する必要はありません。スコアは特定時点において自己のリタイアメント・プランにどれだけ注意を払うべきかを理解するための有益なバロメーターに過ぎないからです。
わずかな調整が大きなスコア変動をもたらす可能性
モンテカルロ分析は、初期段階での結果にのみ有効であるわけではありません。ほとんどのツールでは調整を行い、その調整が長期的な成果に与え得る影響を検証することができます。
例えば、以下の要素をわずかなに調整しただけでもスコアが大きく変動する可能性があります。
- 退職後の支出
- 貯蓄額
- 予定退職時期
- 資産配分
さらに、アドバイザー主導のプランニング・サービスで活用されるモンテカルロ分析は、退職後の展望を描き、自己の状況に応じてプランを最適化することに役立ちます。アドバイザーはこのプロセスを通して助言し、プランに最も有益な調整または行動の優先順位付けができるよう支援します。
モンテカルロ分析は、将来の予測を提供するものではありません。様々な仮説を不測の将来に照らして検証する一つの方法に過ぎません。分析の結果は、このような仮説やインプットの質と正確さによって大きく変動します。配偶者やパートナーとの退職後の生活を設計する場合、より実勢に近い将来像を描くためにそれらの情報を含めるべきであることにも留意してください。
究極のところ、モンテカルロ分析は、合理的かつ情報に基づいた方法で感情的な判断を織り込み、退職後の望ましい生活を実現するプランを戦略的に設計することを目指したデータ主体の方法です。モンテカルロ分析の結果は、仮説が現実化するかしないかを明確に提示するように見えるかもしれません。しかし、リタイアメント・プランを持続的に運用できるよう何らかの行動を取らなければならない可能性を示唆する性質のものです。取るべき行動のほとんどを自身で管理できるという点は、利点と言えるでしょう。
追加ディスクロージャー
当レポートで言及される予測は、ティー・ロウ・プライスのリタイアメント・インカム計算ツールを用いて計算されています。当計算ツールは、モンテカルロ分析を使って、様々な資産クラスのパフォーマンス、貯蓄と支出に関する前提、顧客の時間軸、平均余命、収入、支出、その他の変数などのインプットに基づいて(ただし、これらに限定されません)1,000の仮想シナリオを生成します。モンテカルロ分析では、確率モデルに基づいて将来において潜在的に起こりうる結果の範囲を創出します。モンテカルロ・シミュレーションでは、ユーザーのシナリオを1,000回実行します。例えば、そのうちの600回が成功した場合(具体的には、すべての目標達成のために資金が供給され、退職後の想定期間終了時に最低1ドルの資産が残存している場合)、成功の確率は60%、失敗の確率は40%となります。説明の便宜上、当レポート内のリタイアメント・プランの仮想投資家その1(図表2)の調整例では、女性、独身、コロラド州在住、生年月日1963年6月1日、資産の90%は適格退職年金口座にて管理、退職後に予想される年間生活費は当初52,074ドル、のちに62,000ドル(当初から約20%)、57,000ドル(当初から約10%)に増加すると想定されています。20%の減少を評価するため、開始時の資産価値$1,000,000を$800,000に減額しました。また仮想投資家その2(図表2)の調整例では、男性、独身、コロラド州在住、生年月日は1973年4月1日、資産の90%は適格退職年金口座にて管理、退職後に予想される年間生活費は当初75,000ドル、のちに70,000ドル(当初から約6%)に減少すると想定されています。運用スタンスに関しては、いずれの仮想投資家も、積極的配分(株式90%、債券10%)と中庸配分(株式60%、債券40%)、またこれらの配分比率は一貫性を保つために毎年リバランスされると仮定しています。この前提条件およびその他の前提条件の詳細については、Methodology and Assumptions(英語)をご覧ください。
このツールで提供される情報は、一般的かつ教育的な目的に限定して提供されるものであり、法律、税務、投資のアドバイスを提供するものではありません。前提条件と方法論は、特定の投資家のニーズに合わせたものではありません。本レポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資家の皆様の投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものではありません。ティー・ロウ・プライスの他の教育ツールやアドバイス・サービスでは、異なる前提や方法が使用されており、異なる結果が得られる場合があります。
重要:当リタイアメント・インカム計算ツールによって生成された、様々な投資結果の可能性に関する予測またはその他の情報は、その性質上あくまでも仮想であり、実際の投資結果を反映したものではなく、将来の結果を保証するものではありません。シミュレーションは仮定に基づいています。予測またはシミュレートされた結果が実際に得られる、または維持される保証はありません。実際の運用結果はその都度、また時間の経過とともに変化するものであり、その結果はシミュレーションのシナリオよりも良くなることも悪くなることもあります。クライアントは、損失(または利益)の可能性がシミュレーションで示されたよりも大きい可能性があることにご留意ください。
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