2024年11 月 / グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境
グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境 2024年11月号
作成基準日:2024年11月8日
1. 市場見通し
- 経済指標は景気の底堅さやインフレが鈍化傾向にあることを引き続き示しており、一段の緩和余地が生まれている。
- 米国はインフレが米連邦準備制度理事会(FRB)の目標に近づく中、景気が底堅く推移し、ソフトランディングに向かっていることを裏付けている。欧州経済は低位横ばいが続いており、製造業が不振な半面、サービス業が下支えしている。日本経済は製造業生産の鈍化に伴い緩やかに減速している。中国では刺激策が引き続き景気を支えると期待されるが、その効果はこれまでのところ限定的。
- FRBの利下げペースは今後の指標に大きく左右される一方、欧州中央銀行(ECB)はインフレ低下を受けて追加利下げに踏み切る見通し。日本銀行は欧米と一線を画し利上げ路線へのコミットメントを示している。
- グローバル市場の主なリスクには、地政学的緊張の継続、中央銀行の政策ミス、中国経済の先行きが挙げられる。
2. 市場テーマ
チェック・アンド・バランス (抑制と均衡)
米国大統領選でのトランプ氏勝利を株式市場は好意的に受け止めたようです。しかし、トランプ氏が初めて大統領に就任した2016年(インフレ率は低く、政策金利もゼロ%付近に据え置かれていました)当時と比べ、現在は、インフレは鈍化してはいるものの依然として金融政策上の目標水準を上回り(図表1)、関税引き上げや規制緩和といったトランプ氏の公約の多くが実行に移された場合にインフレが加速するリスクは格段に高まっています。今回、議会上下両院も共和党が押さえる見込みとなったことで米国政治の「チェック・アンド・バランス」(国家統治における権力分立)機能は低下したといえますが、代わりにインフレ加速と財政赤字の拡大を受けた金利上昇が、政府議会に政策規律を強いる圧力を加える(チェック・アンド・バランスが働く)ことになるかもしれません。
収益成長も市場ウェイトも(493社の復権)
高い収益成長により、これまでS&P500指数の上昇をけん引してきた超大型テクノロジー7銘柄(いわゆる「マグニフィセント・セブン」、以下「M7」)ですが、人工知能(AI)投資に対する高い期待が後退し、M7の増益率鈍化が予想され始めたことで、逆に増益率の改善を見せ始めている「その他493社」(図表2)への投資家の注目が高まっています。こうした物色対象の広がりは4-6月期に始まり、経済成長や金融緩和を背景に7-9月期も続いています。M7の増益率は依然としてその他493社を大きく上回っていますが、米景気が底堅く推移し、金融政策が緩和に向かい、新政権下で財政政策や規制環境も変化する可能性がある中、その他493社にも追い風が吹き、収益の伸びに弾みが付き、市場におけるウェイトも増やす可能性があります。
日本の課題は需要不足よりも供給制約
毎月勤労統計調査(速報)の所定内給与(残業代やボーナスなどを含めない「毎月定額の給料」であり、概ね基本給に相当する安定した給与指標)は2024年9月に前年同月比2.6%増と、バブル崩壊後ながらデフレには至っていなかった1993年1月以来、約31年半ぶりの高い伸びとなりました(図表3)。一見、所得改善を示す歓迎すべき指標のようですが、その実、企業が限られた労働者の奪い合いや囲い込みを進めた結果であることも示しています。政治の世界では「デフレ脱却を完全なものに・・・」と、需要刺激をめぐる議論が今でも続いていますが、今後の日本のマクロ面の課題はむしろ供給制約です。①少子高齢化に伴う労働人口の減少、②その結果としてのサービス提供体制や農業・食料供給体制の弱体化により、日本は、企業(特に中小)の人手不足倒産に加え、食料を含む国内供給財やサービスの(a)価格上昇、(b)質の低下、(c)(最悪の場合)供給途絶といった事態に直面する可能性があります。また、そうした環境変化は、株式や債券、通貨をめぐる資産配分にも中長期的に影響を与えうるとも考えられます。
3. 各国・地域の経済環境
4. ポートフォリオ・ポジショニング
- 株式はオーバーウェイトを継続。依然バリュエーションが割高な分野も見られるが、利下げ見通しと米国景気の 底堅さを評価。
- 各国中央銀行が金融緩和に転じたなかで、これまでのテクノロジー銘柄への一極集中から、より広範な銘柄への 裾野拡大が期待される。特にファンダメンタルズや為替の恩恵が期待される日本株のオーバーウェイト。
- 債券はアンダーウェイトを維持、キャッシュは待機資金として保持し、市場環境の変化に備えた流動性を確保するため引き続きオーバーウェイト。
- インフレ率が中銀目標に向かうなか、インフレ連動債はそのヘッジ面からの魅力が薄れたため、ニュートラルに 引き下げ。
- 債券資産内の配分ではファンダメンタルズが総じて良好で利回りが魅力的なハイイールド債を引き続き選好。
5. アセット・アロケーション・コミッティのポジショニング
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