2024年12 月 / グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境
グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境 2024年12月号
作成基準日:2024年12月13日
1. 市場見通し
- 世界経済が引き続き総じて底堅い一方、インフレ率は低下傾向にあり、各国金融政策による影響が乖離を生むにつれ、先行きは変わる可能性がある。
- 米国の景気見通しは成長志向の政策への期待を背景に明るさを増す一方、インフレ率は依然として目標をやや上回っている。欧州と日本の景気は引き続き低調。中国では成長を下支えする政策が続く見通し。
- 他国より経済成長が堅調な米国は、他の中央銀行と比べて金融緩和に遅れが見られる一方、成長やインフレが鈍化している欧州では、ECBが早めに行動を取る可能性が高い。今後のインフレ指標が利上げを後押しする可能性がある日本では、日本銀行が引き続き他の銀行と異なる道を歩んでいる。
- グローバル市場にとって主なリスクには、地政学的緊張の継続、中銀の政策ミス、貿易政策に関する不透明感がインフレ再加速や景気悪化につながる可能性などが含まれる。
2. 市場テーマ
今年はFRBサンタの利下げプレゼントは届くか?
米国景気の底堅さや成長志向の政策への期待の高まりがFRBの政策に影響を及ぼしている様子です。パウエル議長や他のFOMCメンバーの最近の発言は、以前よりも景気や雇用の強さを強調する楽観的なものになっています(図表1)。インフレ率が目標に近づいていることからも、実際あと何回の利下げが必要か疑問視されるようになってきました。当社は12月の追加利下げを予想していますが、インフレを再燃させる可能性もある政策の不透明感が強まる中、2025年はFRBが「様子見」姿勢をとる可能性があります。経済指標がまちまちで金融緩和サイクルの見通しが大きく変化した過去数年と同じく、近いうちに見通しがより鮮明になる可能性は低いと考えています。また、年内に利下げというプレゼントが届かなかった場合、一部の投資家は落胆するでしょうが、いずれ利上げが必要になる場合と比べてまだ良いと感じるかもしれません。
喜びを世界に:米国の一人勝ちから世界市場全体の繁栄へ
新年に向かうなかで、米国の経済と市場の圧倒的な一人勝ち(図表2)が今後も続くとの見方がさらに強まっています。米国の大統領選挙の結果、米国外の国々は貿易政策やドル高の逆風に直面する一方、米国では成長志向の政策が国内景気を押し上げるとの見方が支配的になっています。加えて、米国以外の市場には、例えば成長鈍化や政治的不安定、地域紛争、人口動態、財政再建など、市場を抑制してきたいくつかの要因があります。しかし、こうした米国外市場を圧迫している要因が2025年に緩和し始めた場合の想定も重要です。政策に関する現在の不透明感の中ではそのリスクを予測することは困難ですが、相対的なバリュエーションは有利な状況にあり、コンセンサスが極端に弱気すぎるように見えるため、仮に不安要因改善の兆しが見られれば、米国以外の株式市場にも注目が集まることが期待されます。
やや不透明さを増す日本株への投資環境
今夏以降、日本株の上値の重さが目立ちます。為替市場で円安の進行が止まったうえ、国内総選挙の与党大敗や米国の政権交代後の関税リスクなどの不透明感など、外部環境が警戒されているのみならず、期待されていた国内主要企業業績が7-9月期は予想外に冴えず、予想利益も8月に屈折して以降、ダウントレンドが続いている(図表3)ことが影響しているとみられます。東証の旗振りの下での「資本コストや株価を意識した経営」改革や株主還元の向上、コーポレートガバナンスの改善の進捗などは引き続き日本株のサポート材料と考えられますが、少数与党の下で現在進む、いわゆる「年収の壁」問題改革は、個人や企業にとっては所得税控除額(103万円)引き上げという「アクセル」と社会保険料徴収の賃金要件(下限の106万円と130万円)の撤廃という「ブレーキ」を「同時に踏む」政策変更に等しく、中小企業の負担増も予想され、株価への不透明要因と言えそうです。
3. 各国・地域の経済環境
4. ポートフォリオ・ポジショニング
- 株式はオーバーウェイトを継続。依然バリュエーションが割高な分野も見られるが、利下げ見通しと米国景気の 底堅さを評価。
- 米国大統領選挙の結果が確定したことで不確実性は後退したものの、新政権による政策が米国外に与える影響の見通しは不透明。ファンダメンタルズ改善からオーバーウェイトとしていた日本株も、環境面でも企業自身の力においても株価押し上げを期待できる要素がやや後退しているとみてニュートラルに調整。
- 一方で、選挙の終了を受けた政治的不透明さの後退で企業活動の活発化が見込まれるうえ、減税や規制緩和による景気の加速と企業業績のさらなる伸びが期待される米国株式はオーバーウェイト幅を拡大。
- 債券はアンダーウェイトを維持、キャッシュは待機資金として保持し、市場環境の変化に備えた流動性を確保するため引き続きオーバーウェイト。
- 債券資産内の配分ではファンダメンタルズが総じて良好で利回りが魅力的なハイイールド債を引き続き選好。
5. アセット・アロケーション・コミッティのポジショニング
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