2024年9 月 / グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境

グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境 2024年9月号

作成基準日:2024年9月17日

1. 市場見通し

  • 足元で景気の成長減速とインフレ圧力低下をより決定的に示唆する指標が見られ、中央銀行が緩和に転じる中、景気のソフトランディングはまだ視野に入っている。
  • 米国は労働市場などの落ち込みが見え始めた。欧州経済は製造業を中心に依然として低迷しているものの、サービス業が景気を下支え。日本経済は輸出にけん引されて年初のマイナス成長から回復。中国経済は不振が続いており、政策当局の対応は相変わらず慎重な景気刺激策にとどまっている。
  • 米連邦準備制度理事会(FRB)の関心がインフレから雇用に移り、9月の利下げが確実視されている。欧州中央銀行(ECB)はインフレ指標が落ち着いていることもあり緩和をさらに進める見通し。日本銀行は為替市場への影響を注視しつつ、先進国で唯一利上げへのコミットメントを示している。
  • グローバル市場の主なリスクは、経済成長の急減速、金融政策ミスの可能性、世界各国で行われる選挙、地政学的緊張、中国の成長軌道など。

2. 市場テーマ

米経済の水面下の動きは?

8月の米消費者信頼感指数は景気の底堅さやインフレ圧力低下に関する楽観を背景に持ち直しましたが、失業率上昇と雇用の伸びの鈍化などから、労働市場の悪化懸念は強まっています(図表1)。調査データからも消費者が依然として家計を案じていることが示唆されており、雇用がさらに悪化すれば、消費が一気に冷え込みかねません。これは特に、物価上昇に直面し、コロナ禍での余剰貯蓄が底をついたことでクレジットカードの利用が増えている低所得層の消費者に重くのしかかっています。高所得世帯は金融資産の増加や住宅価格の上昇が信頼感を下支えしていますが、レイオフが広がる場合、彼らの消費性向も急激に悪化する恐れがあります。今後については、利下げが手遅れにならず、労働市場が落ち着くことが期待されます。

待機資金が急増

積み上がった膨大な待機資金がリスク資産に流入するとの市場の期待とは裏腹に、MMF(マネー・マーケット・ファンド)への資金流入は続き、8月の残高は過去最高の6.6兆米ドルに達しました(図表2)。その原因が株式のバリュエーションの割高さにあるのか、債券市場のボラティリティへの懸念なのか、MMFを通じて5%という魅力的な利回りが得られるせいなのかはともかく、慎重姿勢を維持する投資家の多さが示されています。MMFに資金を滞留させていた投資家は、S&P500が過去1年で20%以上も上昇する機会や長期債の最近の急激な利回り低下の機会を逃してしまいました。利下げが始まれば、様子見していた投資家が動き始める可能性がありますが、その動きは緩やかで、大きなインパクトは想定し辛い状況です。最近までMMFの利回りがほぼ0%だった時期が長かったことを踏まえれば、4%の利回りはMMFに留まる強力な理由となるでしょう。

ファンダメンタルズは堅調だが円高で下押し圧力を受ける日本株

8月初めの市場の急変時には、円が先行する形で急騰し、その後は日本株が海外の主要市場を上回る下落率となりました。その後一旦は反発した日本株ですが、円高圧力が続いていることもあり上値の重い推移が続いています。足元の米ドル円の実勢レートは、直物(スポット)、実際に為替ヘッジに使われることの多い6カ月先渡(フォワード)ともに、6月の日銀短観の想定為替レート(全規模全産業)の144円77銭を割り込み(図表3)、輸出企業の業績への為替の影響がプラスからマイナスに転じたことを示しています。ただし、中小企業にとっては、足元の円高は原材料や部品など外貨建ての輸入コストを押し下げる一方で国内大手企業への円建ての納入価格は維持できることから、短期的な利幅改善効果も考えられます。また、GDPや賃金上昇といった日本のマクロ環境の改善に加え、本邦企業の業績やコーポレートガバナンス、資本効率の改善も続いています。さらに自民党の総裁選やその後予想される衆議院の解散・総選挙といった政治面の不透明要因が解消に向かう可能性も考慮すると、日本株の先行きをいたずらに悲観視する必要はないと考えています。

市場テーマ

 

3. 各国・地域の経済環境

各国・地域の経済環境

 

4. ポートフォリオ・ポジショニング

  • 株式は小幅なオーバーウェイトを継続。依然バリュエーションが割高な分野も見られるが、利下げ見通しと米国景気の底堅さを評価。
  • 各国中央銀行が金融緩和に転じるなかで、これまでのテクノロジー銘柄への一極集中から、より広範な銘柄への裾野拡大が期待される。
  • 債券はアンダーウェイト、キャッシュはニュートラルで維持。キャッシュを待機資金として保持し、市場環境の変化に備えた流動性を確保。米国利下げに備えて、金利敏感なアセットクラスは注視。
  • 債券資産内の配分では、インフレおよび地政学リスクへのヘッジとしてインフレ連動債やファンダメンタルズが総じて良好で利回りが魅力的なハイイールド債を引き続き選好。

5. アセット・アロケーション・コミッティのポジショニング

アセット・アロケーション・コミッティのポジショニング

 

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