2022年1 月 / グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境
グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境 2022年1月号
1. 市場見通し 2021年12月31日時点
- 当面はオミクロン株が懸念材料だが、経済は潜在成長率を上回るペースで引き続き拡大するだろう。中央銀行の金融引締政策へのシフトやサプライチェーンの混乱解消に伴い、インフレは低下する見込み。
- 米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和の縮小に乗り出し、イングランド銀行が利上げに動くなど、先進国の中央銀行は金融引締政策をさらに押し進めている。一方、新興国は中国が既に金融緩和に転換するなど、金融引締めのピークに近づいている可能性も。
- 中央銀行の金融引締政策を受けて短期金利が上昇する一方、インフレ懸念の後退や流動性の低下により長期金利は上昇幅が抑制されることで、イールドカーブはフラット化の公算大。
- グローバル市場の主なリスクには、オミクロン株、インフレ圧力の高止まり、サプライチェーンの混乱、中央銀行の政策ミス、中国経済の下振れ、地政学的懸念の高まり等が挙げられる。
2. ポートフォリオ・ポジショニング 2021年12月31日時点
- リスク/リターン特性の悪化や、成長鈍化と中央銀行の引締めという環境下での割高なバリュエーションを考慮し、債券やキャッシュに対する株式のアンダーウェイト幅を拡大させた。
- 株式では、米国グロース株のアンダーウェイト幅を引上げ。景気敏感銘柄を引き続き選好し、バリュエーションがより妥当な水準にあり、景気回復の継続から恩恵を受けるバリュー株、米国小型株、新興国株のオーバーウェイトを維持。
- 債券では、株式のバリュエーションに対するより慎重な見方や、FRBがタカ派姿勢を強め一段の金利上昇が抑えられるとの判断から、ポートフォリオ全体のバランスを取るため、米長期国債への配分を若干増加。
- 全体的な債券配分においては、信用見通しが良好なハイイールド債や変動金利ローンなどデュレーションが短く利回りの高いセクターを引き続き選好。
3. 市場テーマ 2021年12月31日時点
利上げラッシュ
FRBは12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でタカ派的スタンスをより一層強め、テーパリングの加速を発表しました。現在は3月までに資産購入を終了し、年央にも金利正常化に着手する見込みです。タイミングの点から考えると、世界的にオミクロン株の感染が急拡大する中、経済成長ペースやインフレの鈍化が予想されるのと同時期にこのような政策が実施されようとしています。こうした要因を考慮すると、市場はFRBが利上げ打ち止め前に金融政策をどの程度まで引き締めることができるか疑問視しているようです。実際、FFレート先物が示す2024年末の金利水準は1.6%とFRBが目指す2.1%を大きく下回っています(図表1)。イングランド銀行が足元で予想外の利上げに動くなど、他の先進国の中央銀行も行動を起こしており、FRBは素早く行動しないと次の景気後退期での対応が難しくなることを懸念し、利上げラッシュに乗り遅れないように行動を起こしているようです。
新年の抱負
経済の25%近くを占める巨大な不動産セクターの締付け、テクノロジーや教育業界に対する規制強化、クリーン・エネルギー目標を達成するための石炭生産停止による市場の混乱など、中国経済は昨年、多くの試練に見舞われました。これらがもたらした景気低迷に対応し、預金準備率の0.5%引下げ、最優遇貸出金利の引下げ、インフラ・プロジェクト向け融資拡大など、当局は行動を起こしています。中国はより消費主導型への経済構造への転換を図り、投機色の強い不動産セクターへの依存度を下げようとしている様子で、2022年の成長率は2021年の8%から5.5%~6%まで下がる可能性があると考えられてます(図表2)。成長率が下がるとしても、より安定した成長軌道に乗ることは、ボラティリティへの対応を最近迫られた投資家や貿易相手国にはプラスとなる可能性があります。しかし、今後数年にわたり経済を下支えるために、現在は不動産市場のソフトランディングを実現するという今年の抱負の実現に専念する必要があります。
過去10年の日本株は相対的に悪くない(米国株の独走を除けば)
2022年頭にあたり、主要国の中での日本株について昨年および過去10年を振り返ってみたいと思います。2021年の日本株のリターンは+13.4%と、12.7%のマイナスリターンとなった中国市場に比べればましではあったものの、+41.0%の米国、+29.7%の欧州に見劣りする結果となりました(MSCIの各国・地域別指数、税引後配当再投資、円ベース)。9月前半に急騰する局面があったものの、年前半から夏場にかけてはワクチン接種の遅れと新型コロナウイルス感染者増加への懸念、年終盤はサプライチェーン問題の長期化などから、日本株はほぼ1年を通して上値の重さが意識される展開が続きました。しかし、過去10年間(2012~2021年)では傾向が異なります。米国市場が突出して上昇しているものの、それ以外の国・地域の株価パフォーマンスは大差なく、むしろ日本株が中国株あるいは新興国株のいずれにもアウトパフォームしていました。こうした状況は、日本株が孤立して劣後していたその前の10年とは明確に異なっており、改めて長期的に取り組んできた日本の利益率向上やガバナンス改善の重要性を認識させてくれます(図表3)。
4. 各国・地域の経済環境
5. アセット・アロケーション・コミッティのポジショ二ング
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