2022年1 月 / ESG
インパクト投資戦略:変化の時代に即した投資アプローチ
注目が高まるインパクト投資におけるティー・ロウ・プライスの運用アプローチについてグローバル株式インパクト投資戦略のポートフォリオ・マネジャーHari Balkrishnaが説明します。
Helen Ford:ティー・ロウ・プライスのインパクト投資戦略における投資哲学はどういったものでしょうか?また、上場株式のインパクト投資運用者としてどのように違いを生み出すことを目指していますか?
Hari Balkrishna:ティー・ロウ・プライスのグローバル株式インパクト投資戦略では、ポジティブな環境・社会的インパクトと株価リターンの両方を追求します。
まず第一に、マテリアリティの観点からは、企業のビジネスモデルにおけるインパクトの規模に着目します。基本的に、投資先企業の売上や収益の大部分がインパクト投資の3本の柱(①気候と資源へのインパクト、②社会的公正性と生活の質へのインパクト、③持続可能なイノベーションと生産性へのインパクト)の内の一つから生み出される必要があります。
第二に、計測可能性も重要です。我々は投資開始段階でインパクト投資対象企業のKPI(重要評価指標)を評価します。一例として再生可能エネルギー企業への投資では、エネルギー産出量と結果として回避された二酸化炭素排出量を考慮します。
第三に、上場株式運用会社として特に追加性(エンゲージメントを含む投資行動による業界・社会への追加的な効果)を重視しています。プラスのインパクトを生み出す事業を営む企業に投資すると同時に、企業とのエンゲージメントや当運用戦略固有のガイドラインに基づく議決権行使を通じ、追加性の発揮を目指します。運用方針の達成のために議決権行使を活用し、インパクト課題について積極的なエンゲージメントを行います。積極的なエンゲージメントは上場株式のインパクト投資運用者として最終的なインパクト達成における違いを生み出す重要な特性だと考えています。
第四は、耐久性です。リスク管理をプロセスに組入れ、単なる過去のESG要因の動向を反映するのではなく、幅広いアイディアを網羅したポートフォリオの構築を目指しています。先を見据えた視点で変化を捉え、インパクト投資の3本の柱が様々なセクターや地域を網羅するよう図ります。グローバルな視点と将来に対する洞察に基づき、株式投資に付随する銘柄固有のショックや景気ショックへの耐性を備えた運用アプローチを創造し、顧客と協働しプラスのインパクトを生み出すことを目指します。
Helen Ford:インパクト投資の投資機会について、再生可能エネルギーやヘルスケアなどの分野以外に魅力的な分野はありますか?
Hari Balkrishna:当運用戦略において耐久性を備えたポートフォリオとは、周知のインパクトより一歩踏み込んだ投資機会を探すことを意味します。様々な分野にインパクトが過小評価されている投資機会が多数存在します。
3本の柱のうち、気候と資源へのインパクトでは温室効果ガス削減を目指す企業がインパクトを創出することが明らかです。よく知られている再生可能エネルギー以外では、他社の脱炭素化に貢献する資本財・サービス企業が挙げられます。二酸化炭素の回収やグリーン水素需要に対応する産業ガスがその例です。その他に、健康的なエコシステムの促進や循環経済の実現に寄与する企業は重要な役割を担うものの、そのインパクトはまだ十分に理解されていません。
社会的公正性と生活の質へのインパクトでは、新興国・先進国で金融普及を通じて社会的公正を推進する企業に注目します。また、この柱には健康に関連したインパクトを創出する企業も含まれます。ヘルスケアのエコシステムの中で、イノベーションを加速させ、コスト削減に寄与する企業や患者の治療結果の大幅な改善を可能にする企業に注目しています。小分類のうち生活の質の向上では、肉体と精神の健康改善に寄与する企業や個人情報保護、サイバーセキュリティ関連の企業に焦点を当てています。
持続可能なイノベーションと生産性へのインパクトでは、社会・環境問題の技術面の解決策を提供する企業に着目します。これらには、教育・技術・医療の革新やデジタルイノベーションに資する半導体企業やスマートシティインフラ企業、スマート製造企業が含まれます。インパクトが明白な分野よりさらに一歩踏み込み、投資家が将来のインパクトを十分に理解していない、または将来のインパクトが株価に反映されていない投資機会を探ります。
Helen Ford:インパクトの推進は重要ですが、その計測に絡む課題はどういったものでしょうか?それらの課題をどのように克服していますか?
Hari Balkrishna:インパクトではデータ収集が不完全であるため、その測定はさらに困難です。
ティー・ロウ・プライスでは銘柄毎にインパクトを評価し、2段階でインパクトを計測します。投資に先立ち、事業や投資の分野でのインパクト・マネジメントに関する国際イニシアチブ「インパクト・マネジメント・プロジェクト(IMP)」の定める5つの側面からインパクトを評価します。①その戦略的目標は何か②誰が影響を受けるか③規模④深度⑤リスクを評価します。また、あらかじめ設定したKPIが変化しているかを毎年計測します。
投資後は変化理論を利用してインパクトを計測します。インプット、活動、結果、アウトプットを確認し、投資開始時点のKPIに対するインパクトを評価します。これは、インパクトのテーマ対比でのパフォーマンスの捕捉を可能にする重要なアプローチです。データや社内の調査に加え、インパクト測定の質の向上に役立つと思われる場合には科学的・学術的研究も活用し、詳細な分析に時間を費やします。
測定がより容易になる最も簡便な方法は、共通かつ広く受け入れられる枠組みの確立へ向けて、データの入手可能性の改善がみられることです。そのため、データ開示を進めるために企業とエンゲージメントを行うことが、我々の長期的な役割の一つであると考えています。当面は、どういった分野のインパクトが二酸化炭素排出量の削減に貢献しているかを理解するために、多くの業種における排出量や炭素強度に関連した総合指標を用います。近年、環境関連のデータ開示は著しく改善しており、インパクト投資の運用者がより正確に測定できるよう、今後も改善されていくでしょう。
Helen Ford:インパクトと株価パフォーマンスのバランスをどのようにとっていますか?
Hari Balkrishna:環境や社会にポジティブなインパクトをもたらす企業に投資することは、すなわち消費者の嗜好や規制、業界成長の変化の恩恵を受ける企業に焦点を当てて投資することを意味します。これらの企業の多くは、市場全体を上回る収益と利益の伸びを達成する可能性があり、妥当な株価でかつ妥当なバリュエーションで投資することができれば、市場をアウトパフォームする可能性は高くなります。長期的にはポジティブなインパクトをもたらす企業への投資は市場を上回るパフォーマンスを創出すると考えています。
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当社の運用戦略では時価資産残高に対し、一定の金額までを区切りとして最高1.265%(消費税10%込み)の逓減的報酬料率を適用いたします。また、運用報酬の他に、組入有価証券の売買委託手数料等の費用も発生しますが、運用内容等によって変動しますので、事前に上限額または合計額を表示できません。詳しくは契約締結前交付書面をご覧ください。
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