著者  Sébastien Page , Justin Thomson , Blerina Uruçi , Gilad Fortgang , Timothy C. Murray, CFA®
レポートをダウンロードする

市場環境:世界市場の激変を乗り切るために

2025年4 月

サマリー
  • 関税政策は不確実性をもたらし、世界の貿易力学に影響を与えている。
  • 足元の市場環境は厳しいが、戦略的資産配分の機会も見い出せる。

今回の米国の関税政策とそれを受けた市場混乱を踏まえ、当社グループの上席運用関係者から経済や市場への影響や今後の見通しについて見解をご紹介します。なお、本書は、米トランプ大統領がほとんどの国との相互関税上乗せを90日間停止すると発言した2025年4月9日の数時間前に編集したものであり、最新の動向を反映した見解や見通しでない場合があります。

関税による混乱

Gilad Fortgang
米国株式部門ワシントン・アソシエイト・アナリスト

2025年4月2日にトランプ政権が発表した関税率は、マッキンリー関税法、スムートホーリー関税法、ニクソン政権の政策といった歴史的先例を彷彿とさせる、過去100年以上で最も高い貿易障壁です。今般の相互関税の背後にある動機は複雑かつ多面的であり、トランプ大統領の積年の関税に対する思考が重要な役割を果たしています。貿易相手国とは何らかの交渉は避けられず、その結果は現時点で予測するのは困難で、市場の予測不可能性を助長しています。

トランプ政権の重要な政策アジェンダは、「米国内投資の促進」、「米国内製造業の再編・再興」、「世界貿易システムの現状変更」が含まれていると考えられます。しかし、これらは、今後の政治力学から変更となる可能性があり、帰結は見通しにくく、短期間では解決できない複雑な問題と考えられます。

世界の反応はさまざま

Justin Thomson
インベストメント・インスティチュート責任者及びCIO

市場は重大な転換点に直面しています。世界最大の経済大国である米国の経済政策の転換は、世界に大きな影響を及ぼします。当初は相互関税が軽微とされる国や地域であっても、やがては影響を感じるようになるでしょう。

各国の反応も様々です。カナダは憤慨して反発しており、イギリスやメキシコは互恵的な攻勢をかけています。日本と韓国は交渉に前向きで、ヨーロッパ各国も同様です。しかし、焦点になるのは中国で、ここでの緊張の高まりが市場に不透明感を与えています。日本については、為替面や米国にとってのポジションを考えると、市場回復の可能性があるかもしれません。世界経済の構造的な変化は、長期の資本移動に影響を与える可能性があり、米国一強が終わる可能性を示唆しています。  

経済的な意味合い

Blerina Uruçi
チーフ米国エコノミスト

米国の景気後退観測は過去3年間にしばしば話題に上り、その可能性が50%を超えるといったこともありましたが、消費者や企業部門の余剰貯蓄や利益率といったクッションがあり回避されてきました。しかし、今回はそういったクッションが減少しており、懸念は以前と比べて高まっているように見えます。米国の関税が2024年の2.5%から2025年に20%超*へと引き上げられることは大きな経済的ショックであり、個人消費とインフレに実質的な影響を与える可能性があります。

インフレの持続性は消費者や企業部門のインフレ期待に依存します。なぜなら、過去のインフレ・ショック時を振り返ると、販売価格に上乗せする行動が見られ、前年比での高い価格上昇率が避けられなかったからです。こうしたショックが立て続けに起こると、スタグフレーションの可能性が高まります。さらに、コロナ禍以降、米国では300万人から500万人の移民が流入し、労働供給において重要な役割を果たしてきました。特に医療や教育などの分野で、労働需給の逼迫を緩和するのに役立ってきました。しかし、移民の抑制は労働市場の逼迫とインフレ圧力の持続につながる可能性があります。関税による供給ショックと潜在的な拡張財政の政策ミックスは、需給のミスマッチをさらに悪化させ、スタグフレーションの可能性を高める可能性があります。

極端な市場環境 

Sébastien Page
グローバル・マルチ・アセット部門責任者及びCIO

最近の市場のボラティリティは顕著に高く、株式市場は10%超下落しました。これは第二次世界大戦以降でまれに見る市場環境です。これまで多くのケースで当社のアセット・アロケーション・コミッティでは、ボラティリティを利用して、下落局面で押し目買いする方針としてきました。しかし、現在の状況は異なっており、より慎重なアプローチを方針としています。クレジット・スプレッドの調整はまだ不十分と見られ、クレジット債のポジション縮小を検討しています。コミッティでは、短期的な見通しは慎重で、長期的な投資価値を重視し、非米国株に注目しています。.

今後を見越して

今後を見据えて、重要なことは、たとえ極端な関税率が一時的であっても、関税引き上げはそれ自体が経済の見通しにリスクをもたらすということです。こうした不透明な市場環境は、熟練したアクティブ運用にとってはチャンスでもあります。安定的に優れた運用成果を上げるには、長期的な視点が必要です。重要なことは、このような変動があっても、長期の視点から運用目標に焦点を合わせつつ、分散投資を行い、規律あるアプローチを維持することだと考えています。 

Sébastien Page グローバル・マルチ・アセット部門責任者及びCIO Justin Thomson インベストメント・インスティチュート責任者及びCIO Blerina Uruçi チーフ米国エコノミスト Gilad Fortgang 米国株式部門ワシントン・アソシエイト・アナリスト Timothy C. Murray, CFA® マルチ・アセット部門資本市場ストラテジスト

*本書作成時点における見通し. 

重要情報

当資料は、ティー・ロウ・プライス・アソシエイツ・インクおよびその関係会社が情報提供等の目的で作成したものを、ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社が翻訳したものであり、特定の運用商品を勧誘するものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。当資料における見解等は資料作成時点のものであり、将来事前の連絡なしに変更されることがあります。当資料はティー・ロウ・プライスの書面による同意のない限り他に転載することはできません。
資料内に記載されている個別銘柄につき、売買を推奨するものでも、将来の価格の上昇または下落を示唆するものでもありません。また、当社ファンド等における保有・非保有および将来の組み入れまたは売却を示唆・保証するものでもありません。投資一任契約は、値動きのある有価証券等(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、お客様の資産が当初の投資元本を割り込み損失が生じることがあります。
当社の運用戦略では時価資産残高に対し、一定の金額までを区切りとして最高1.265%(消費税10%込み)の逓減的報酬料率を適用いたします。また、運用報酬の他に、組入有価証券の売買委託手数料等の費用も発生しますが、運用内容等によって変動しますので、事前に上限額または合計額を表示できません。詳しくは契約締結前交付書面をご覧ください。
「T. Rowe Price」、「INVEST WITH CONFIDENCE」および大角羊のデザインは、ティー・ ロウ・プライス・グループ・インクの商標または登録商標です。

ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社
金融商品取引業者関東財務局長(金商)第3043号
加入協会:一般社団法人 日本投資顧問業協会/一般社団法人 投資信託協会/一般社団法人 第二種金融商品取引業協会

202504-4405781

こちらは機関投資家様向けのページです

こちらのページの内容は機関投資家様向けのものになります。機関投資家様かどうかボタンにてご確認いただきますようお願いいたします。

いいえ