2025年3月 / インサイト

AIエージェントとロボティクス:未来の技術革新の原動力となるか

サマリー

  • グローバル・テクノロジー業界の2025年の見通しについては、テクノロジー関連投資が増加し続ける中、人工知能(AI)のイノベーションに不可欠な半導体に対する需要が引き続き増大していることから、依然として楽観的と見る。
  • 生成AIの急速な進化により、企業が自律型アプリケーションや高度なロボティクス、人の代わりにタスクを実行するAIエージェントの開発が進むことで、企業の生産性向上を後押しする可能性がある。
  • AIのイノベーションの最前線に立つ主要テクノロジー企業は、今後12ヵ月にわたり好調に事業展開する優位な立場にある。テクノロジー銘柄や関連銘柄のバリュエーションは概ね妥当である。

当社が毎年シリコン・バレーを訪問して行っている調査は、AIが2025年も株式市場の主要な原動力となる可能性が高いことを浮き彫りにしました。AIは長期的に世界経済を変容させる可能性があります。人と対峙してデジタル・タスクを実行することができるAIエージェントから、自動運転車や人型ロボットの進歩など、AIがもたらす未来の可能性が明らかになりつつあります。当レポートでは、テクノロジー分野が未来の世界を形成するなかで、当社が現在注目しているいくつかの投資テーマを考察します。

生産性向上への期待がチップ需要を押し上げ

AIテクノロジーは、あらゆる産業においてコスト削減や効率化をもたらす可能性を秘め、世界経済には、デフレ圧力となる可能性があります。企業のAIを自動化や意思決定に利用する動きを見れば、AI技術は、電気が発明されて以来、最大の生産性向上をもたらす発明となる可能性があります。

AIアプリケーションのイノベーションが加速し需要を押し上げるなかで、AI革命の推進力となっている先進半導体メーカーは、優位な立ち位置にあると考えられます。大手企業は、AIを支えるインフラに多額の投資を継続すると見込まれ、AIや新技術への需要は、向こう12ヵ月間にわたって堅調に推移すると予想しています。特に、汎用グラフィックス・プロセシング・ユニット(GPU)から特定用途向け集積回路(ASIC)へと、デジタル半導体の用途の広がりが見られます。また、ディープシークのような新しい低価格のAIモデルが市場に与える破壊的な影響も注視しています。今後も大小様々なAIモデルが誕生していくと予想しています。消費者向けに最適対応を追求するAIの用途では、より大規模なAIモデルが必要となり、コストがかかります。そうしたAI利用がより現実的に普及するには、より手頃な価格のAIモデルが重要な鍵となるかもしれまません。その結果、中期的にAIが広く採用されるにつれて、学習や推論の需要がますます高まると考えられます。

AI向け半導体の競争環境

中国のAI企業「ディープシーク」による生成AIのようなイノベーションは、AIハードウェアに一定程度の利用効率の向上をもたらす可能性があります。まだ不確かな部分があるものの、米国のAI研究者たちは、これらの効率的な手法を取り入れ、AI開発に同等の(あるいはそれ以上の)計算量と資金を投じ、これまで以上の成果を獲得する可能性も考えられます。

このような盛り上がりが投機的な加熱に繋がる可能性はあるのでしょうか?現在のバリュエーションから、1990年後半のITバブル期のような過熱的な状況ではないとみていますが、それが起こる可能性はあります。アクティブな運用マネジャーの役割として、潜在的なバブルは絶えず意識することが重要と考えています。「AIは永遠」とは、AIに周期性がないという意味ではありません。技術革新の波に乗じて、市場では、直線的な成長を予想するむきがあり、S字カーブ2に不意を突かれる可能性があります。サプライチェーンの問題も今年前半に注視すべきポイントの一つと考えます、市場はそうした短期的な問題を乗り越えていくと予想しているように見えます。

 

企業向けソフトウェアの「灯台エージェント」を巡る競争

AIインフラ投資の増加につれて、2025年とさらにそれ以降も、AIアプリケーションの画期的な進化が続くと私たちは予想しています。AIエージェントの出現は、AIの用途を急速かつ拡張的に広げています。これらの高度なAIシステムは、企業内でタスクを計画し実行する能力を備えており、「道しるべ」のような役割を果たします。AIエージェントは、人が関与する基本的なチャットボットの領域を超え、データ収集、意思決定、タスクの遂行、趨勢的な効率性向上の学習など、タスクを自律的に処理する能力を備えたバーチャル従業員として機能します。企業向けソフトウェアの世界では、どの主要プレイヤーが「灯台エージェント」、すなわち種々のデータを引き出し、企業において他のエージェントを指揮する主たるAIエージェントになれるかを巡って競争が繰り広げられてています。また、プラットフォーム内にデータ蓄積すると、そこにデータやアプリケーションをさらに追加していくため、そのシステムから離れることがますます難しくなります。

これは「データグラビティ(重力)」と呼ばれ、AIエージェントの普及と相まって、2025年にソフトウェア市場をリードする重要なファクターになるでしょう。テクノロジー企業は、こうしたAI技術を活用するために、データ環境を最新にする必要があります。

業界は技術革新の加速やテクノロジー投資拡大の環境にあるものの、一部のソフトウェア企業の株価バリュエーションは上昇しており、慎重な見極めが必要と考えています。

収益予想の慎重な精査と、ビジネス・トレンドが上向きであることの見極めが重要です。投資テーマとしては、AIインフラへの多額の投資を今後数年で利益につなげるという点で最も優位な立場にあると思われるアプリケーション開発企業が注目されます。しかし、最近になって低コストのモデルが出現したことが示すように(市場は大きく反応した)、AIを取り巻く環境はダイナミックかつ急激に変化するため、起こりうる変化や困難に注意する必要があるでしょう。

垂直統合:未開拓のロボティクス分野

AIコンピューティングがイノベーションを促進する興味深い分野に物理分野への応用があります。2025年にAIが消費者に便益をもたらす物理分野としては、自動運転車が考えられます。AIの技術進歩は、大手テクノロジー企業による高度な自動運転車や人型ロボットの開発を一層前進させるでしょう。また、AIは、データ活用において強力なツールとなるだけでなく、垂直統合型のビジネスモデルに対しても、合理化効果をもたらすため、そうした銘柄への投資も有効でしょう。特定のアプリケーションや人型ロボットが商業的に拡大するまでには時間がかかりそうですが、こうした「AIエージェント」分野への応用は、企業の生産性を大幅に向上させる可能性があります。

デジタル領域を超えて:AIアプリケーションの物理の世界への活用

 

世界規模の成長カタリストとしてのAI

2025年のグローバル・テクノロジー業界の私たちの見通しは、引き続き楽観的です。グローバル・テクノロジー企業のバリュエーションは、概ね妥当と見ています。AIイノベーションの最前線に立つ大手テクノロジー企業は、次のサイクルの段階においても優位性を維持すると見ています。テクノロジー企業の中には、製品の納品やクライアント・サービス事業もあるため、景気が回復すればその恩恵を受ける企業も存在し、投資収益機会の分散化が期待できます。結局のところ、AIは業種横断的に成長の重要な推進ファクターであり続けるでしょう。急速な変化とグローバルな成長要因であるAIの特質を考えると、投資機会の特定やリスク管理の観点から、機動的に投資機会を見極めて投資するアクティブ運用アプローチが有効と言えるでしょう。

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