2023年5 月 / インサイト

米中関係において投資家が注目すべき3つのテーマ

大国間の衝突がリスクと投資機会を生む

米国の民主・共和両党の議員は、米国の産業政策をますます中国との覇権争いとして捉えています。米国が強硬姿勢を貫けば、資本市場や特定の産業にとって重大な意味合いを持つことになるでしょう。

当レポートでは、我々が米中関係において短中期的に注目している3つのテーマとそれらが投資家に何を意味するのかを考察します。

1.  米国は、国家の安全保障とイノベーションにおける優位性を重視

このテーマは、米国が過去5年にわたって進めてきた主要な貿易・経済政策の多くに貫かれていると言ってよいと考えます。

トランプ前政権が中国の通信機器メーカーであるファーウェイに対し、重要な米国製部品へのアクセスを制限し、同盟国にも5Gワイアレス・ネットワークを敷設する際に同社製品を使わないよう促したことは記憶に新しいところです。

より最近の例では、米商務省が CHIPS法を通じ、補助金を受け取っている企業は、中国や安全保障上の懸念がある国において先端半導体の生産設備を建設することができないと規定しました。

このトレンドは今後も続き、以下のようなことが想定されます。

米国は輸出規制の対象となる技術や中国企業のリスト拡大を検討しています。ここでは(気球などによる)偵察やバイオテクノロジーが注目される新たな重点分野として浮上する可能性があります。

また、対外投資規制の強化も注目されます。中長期的には、米国企業が主要国で特定の投資を行う前に政府の承認を得ることを要件とするまで、この枠組みは発展する可能性があります。

こうした事態が起こるとすれば、米国以外の国際市場に投資する米国の投資家にとって、重大な転換点となるでしょう。我々は事態を注意深く見守っていきます。

2.  米国は一部の外交問題では独自路線を歩む必要性も

バイデン政権は外交政策の目標達成に向け、同盟国とより緊密に連携することを強調しています。

例えば、米国は今年初めに日本とオランダとの間で半導体製造装置に輸出規制を導入することで合意しました。こうした規制は、中国が先端半導体へアクセスすることを制限し、この分野で中国が国内生産体制を整える動きを阻害するために米国がとった対中規制を強化することでしょう。

しかし、米国の同盟国が、米国が導入する対中規制の全てに足並みを揃えるとは限りません。重要な問題に関して利害が相違する場合、これらの同盟国との緊張が高まる可能性があり、地政学的な不確実性が高まることになるでしょう。

3.  中国に対する米国の強硬姿勢が反発を招く可能性も

最近の米国の輸出規制に対する中国の反応は、特にトランプ大統領の在任中に両国が発動した貿易報復関税の応酬と比較すると、限定的なものでした。

しかし、中国のサイバーセキュリティ審査局は、3月末に国家安全保障上の懸念を理由に、米国の半導体メーカーであるマイクロン・テクノロジーの製品を調査すると発表しました。

この調査の詳細や結果はまだ発表されていません。しかし、中国のこうした行動は、投資家に、米国の貿易・経済政策に対する中国の潜在的な反応に目を光らせておく必要があることを再認識させるものです。

投資家にとって重要なこと

テクノロジー分野における米国と中国の緩やかな対立は今後も続きそうです。投資家は、米中関係の悪化はさらなる制裁へと発展するリスクを高める可能性があることをはっきり認識しておくべきです。

一方で、米国と中国が戦略的に重要な産業を強化しようとすれば、こうした破壊的なトレンドは投資家にとってリスクだけでなく投資機会をもたらす可能性があります。

例えば、半導体の設計・製造に必要なソフトウェアや高度で特殊な装備を提供する企業は、米国や欧州での半導体工場建設の動きによる恩恵を受けると考えられます。

また、中国が先進的ではないアナログ半導体の生産能力拡大に注力する可能性もあり、中長期的にこの分野は供給過剰に陥るリスクも考えられます。

 

 

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