2022年9 月 / インサイト

Hari Balkrishnaに聞く

グローバル株式インパクト投資戦略ポートフォリオ・マネジャー

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17年の運用経験と環境・社会面のインパクトに対する情熱を持つHari Balkrishnaには、グローバル株式インパクト投資戦略を運用する十分な資質を有しています。株式市場では、投資家が環境・社会面でポジティブなインパクトをもたらすことができる企業をよりアクティブかつ意識的に選別するための市場環境が整ってきたとBalkrishnaは考えています。

これまでの経歴と資産運用業界でキャリアをスタートさせた背景について教えて下さい。

私は学生時代から金融界で責任ある職種や金融市場のゲーム理論に関心があったため、学士過程終了後は資産運用業界で働きたいと考えていましたが、卒業後すぐに資産運用業界に入ることはできませんでした。その代わり、ゴールドマン・サックスに入社し、オーストラリアのシドニーで投資銀行部門に就職しました。しかし、4年間務めたあたりから自分に向いていないと思い始め、資産運用業界へ転職を考え、グローバルな知識、見識を習得するためビジネス・スクールに入学しました。

ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを目指しながら、ティー・ロウ・プライスのロンドン拠点でアナリストとしてサマー・インターンシップを経験しました。そこで2008年の世界金融危機後に大きな変化を遂げていた銀行セクターを担当しました。MBA取得後、ティー・ロウ・プライスにアナリストとして採用され、欧州とカナダの銀行、自動車、不動産を担当しました。

グローバル株式インパクト投資戦略のポートフォリオ・マネジャーに就任する前は、グローバル・グロース株式戦略のアソシエイト・ポートフォリオ・マネジャ―を6年間務め、Scott Bergと働きました。これはセクター全般にわたるグローバルな投資知識を養う上で素晴らしい経験となりました。特に貴重だったのは、世界中のアナリスト、セクター・ポートフォリオ運用のポートフォリオ・マネジャー、分散型ポートフォリオを運用するポートフォリオ・マネジャーと協働関係を構築し、関係を深めたことでした。

インパクト投資のどこに魅力を感じたのですか?

個人的には、世界5大陸にわたり生活し働いてきた経験から、異なる社会制度について造詣が深く、気候変動の問題解決に常に情熱的に取り組んできました。グローバル株式インパクト投資戦略は、地球と社会が今日直面している課題の解決に前向きに貢献したいという私の願望によって生まれました。インパクト投資は、意識的な行動、エンゲージメント、高度な売買執行を通じて、これらの社会課題に影響を与え、取り組むことができる最も直接的な方法であると考えています。インパクト投資は、単に特定の企業の株式保有を通じ業績や活動を捕捉することに留まりません。インパクト創出を目指して資本を配分すると同時に、最善の結果を達成すべく、企業の経営陣とのエンゲージメントや積極的な議決権行使も行わなければなりません。

インパクト投資は、運用プロセスに非金融的な要素も取り入れており、環境・社会面でのポジティブなインパクトを明確なパフォーマンス目標の一部として追求し、重要性、測定可能性および追加性を備えた、価値を重視する投資アプローチです。社会・環境面の変化から恩恵を受ける企業に投資する上で、インパクト投資は極めて重要であると考えています。ポジティブなインパクトを追求し、変化を可能にする企業に資本を直接投下することが可能ですが、これをファンダメンタルズ分析、詳細な調査およびバリュエーションの規律と組み合わせなければなりません。

上場株式投資で環境・社会面の重要な課題にインパクトを与えられますか? 特に、プライベート・エクイティと比べてどうですか?

インパクト投資は当初、プライベート・エクイティ(未公開株式)投資の領域でしたが、公開株式市場、つまり上場株式市場でもインパクトを捕捉・創出する余地がこの10年で大きく広がってきました。環境および社会的課題に直接的にアプローチし、変化を求める高い目標が国際的および地域社会で設定されています。それらの目標のなかで、国連の持続可能な開発目標(SDGs)は、貧困を撲滅し、地球を保護し、繁栄を確保することを目指す世界的に認められた枠組みです。国連SDGsの目標を達成するためには、2030年まで毎年約2.5兆ドルの追加資本が必要になると推定されています1

こうした目標やその他の環境および社会の転換を目標とする取り組みを加速させるには、大規模かつ流動性の高い資金提供が必要不可欠です。よって、上場株式市場はその条件を満たす極めて重要な資金調達源となります。クリーン・エネルギーへの移行のような重大な問題は、大規模かつ十分な資金を有する上場企業の支援がなければ解決できないでしょう。

今後、企業は環境や社会の課題に対応した事業を行っていく必要があります。その結果、環境面または社会的にポジティブなインパクトを生み出す企業への投資機会が上場株式市場においてかつてないほど高まっている点は歓迎すべきことです。

インパクト投資の運用者として顧客のためにどのように違いを生み出しますか?

我々は長期にわたりインパクトと潜在的なアルファの両面で目標を達成するためにアイデアを総動員し、顧客の良きパートナーとなることを目指します。インパクト投資は、価値を追求する投資を実行しリターンを犠牲にしない運用を提供することから近年大きく伸びてきました。

インパクト投資戦略ポートフォリオ・マネジャーとしての私の役割には、世界で何が起きているかや、それが投資先企業のリスクや成長機会にどのように影響するかについて個人投資家や対象企業に理解を促すことも含まれます。例えば、気候変動の環境コストが増大するにつれ、将来に向けた計画策定や気候変動を考慮することが実質的に企業の収益改善につながる可能性があります。

環境や社会的な問題の解決を通じた経済的リターンの創出を目指し、企業が資本の適切な配分に注力し、これに積極的に取り組むことで、投資機会が増大すると見込んでいます。投資対象の広がりはインパクト投資の一貫性を維持し、リターン目標を達成する上で重要な基盤となります。要するに、インパクト投資の機会がますます増える時代となり、顧客がこれらの投資機会を捉えられるよう手助けすることは特別なことだと思っています。

また、アルファの観点から言えば、インパクト志向の企業は、市場平均よりも高い売上と利益の成長機会をもたらすことができると私は考えています。これらの企業の付加価値は、顧客からの需要が高い製品を持っているばかりでなく、世界がネット・ゼロ目標の達成に努めるなかで、政府や規制当局が奨励したいビジネス・モデルを有しているという事実です。

運用会社はどうやってポジティブなインパクトの創出に寄与するのでしょうか?

運用ポートフォリオのなかで、特定の企業の株式保有を通じ業績や活動を捕捉する以外に、様々な方法でインパクトを創出することが可能です。インパクト志向の企業とのエンゲージメント、議決権行使、それに関連する影響のフィードバック・ループを通じて企業側に新たな資金配分を促すことができます。

まず、望ましい結果の重要性と測定可能性の両面についてインパクトの視点から企業を選別します。そのためには、定義されたインパクトの枠組みのなかで企業を理解する必要があります。我々は、企業の現在と将来の事業を評価するとともに、利益または売上と我々のインパクト評価のピラー(柱)および国連SDGsとの整合性を評価します。多くの企業の変化と将来を見据える必要性を踏まえ、我々は「将来」という言葉を極めて慎重に用います。

重要な点として、我々は真にグローバルな資産運用会社として、目標とするインパクト分野に新規資金を供給する準備ができています。運用者としての立場を活用し、対話を通じて、会社である以上避けられない要因による不利益(環境汚染等、経済活動に伴い直接関係を有していない第三者が受ける不利益)が軽減できるよう助力し、一方で事業のプラスの側面を後押しすることを図ります。変化には時間がかかることから、粘り強さが求められますが、これは多くの点において長期投資の成功する要件と共通しています。

グローバル株式インパクト投資戦略のポートフォリオは他社のテーマ/ファクター型のESG投資、サステナビリティ投資、インパクト投資とどのような違いがありますか?

まずインパクト投資とESG (環境・社会・ガバナンス)インテグレーション(投資判断にESG要因を加味)やサステナブル投資の違いを認識することが大切です。インパクト投資は双方の要素を取り入れ、さらに一歩踏み込みます。上場株式のインパクト投資は他のスタイルの投資と同じ土俵で行われます。インパクトのために潜在リターンを犠牲にする必要はありません。10年前と比べ、現在は遥かに多くの投資機会が存在します。企業の事業形態を切り口とするESGインテグレーションやサステナブル投資と比べると、インパクト投資は、外部(地球や社会)への影響かつ将来を見据えた視点に立っています。

ただし、インパクト投資の銘柄選択で実績を残すには、過度な集中による割高な銘柄や業績が市場予想を下回るような銘柄を回避するために他の投資と同等以上のデュー・デリジェンスが必要です。

将来を見据えた視点、専門家による安定したリサーチ基盤、豊かな想像力が運用プロセス成功の鍵を握ります。

インパクト投資の将来像をどのように描いていますか?

変化は多くの場合に極端から生まれます。そして現在は多くの観点から極端な時代です。この時代の課題は、人の権利と自由について開かれた幅広い議論、不平等の増大、環境への明白な圧力を生み出してきました。この点について言えば、企業が事業を営んでいる社会や環境においてどのように行動するべきかについて明白な期待が高まるなかで、過去2年間に世界で起きたことを見ても、社会や運用会社はそうした期待に沿う動きを示せていないと思います。

一方で、企業が新たに設定した改善目標を重視し、それに応じた行動を取ろうとしていることには勇気づけられます。企業は差し迫った問題の解決を求める社会の要求に応えてイノベーションを行っており、業界リーダーは自己責任を認識して適応しています。これは、上場株式市場内でポジティブなインパクトをもたらす企業へ投資する機会をますます多く生み出すでしょう。

個人的な興味について教えてください。またそれが仕事との結びつきがあれば教えて下さい。

私は仕事と生活のバランスを取ることが重要だと思っています。私には様々なことに興味を示す子供が2人おり、子供たちと時間を過ごすことが楽しみです。特にクリケットやスカッシュを楽しんでいます。サイクリングやバドミントンも好きです。

私はロンドン拠点の企業責任コミッティの共同議長を務めています。それはティー・ロウ・プライスが地域社会にインパクトを与えることができる機会をもたらしてくれます。地域社会に真に特別なことで貢献できる極めて実りの多い活動です。ボランティア活動や慈善活動では、自分たちの活動の違いを検討し、世界をより良い場所にするためにどう資本を配分するか考えることは、インパクト投資の運用目的を思い起こさせてくれます。

 

グローバル株式インパクト投資戦略

目的

グローバル株式インパクト投資戦略は、元本の長期成長を目標として、環境面または社会的なプラスのインパクトと、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ネットリターン)のアウトパフォームの両方を目指します。当運用戦略では主に世界の株式市場に上場する大型企業の株式に分散投資します。とりわけ持続可能性や利益およびキャッシュフローの耐久性が過小評価されている企業に焦点を当て、先進国および新興国の株式市場に上場する企業の株式に投資します。

リスク – 当戦略代表口座に大きく関連するリスクは次のとおりです:

スタイル・リスク -異なる投資スタイルは、通常、市場状況や投資家のセンチメントに応じて成果が異なります。当社は確信度が高く、ポジティブなインパクトに根差した長期的な運用アプローチを採用しています。このアプローチはリターン(とくに長期的な累積リターン)に有利に働くと見ていますが、長期的な利益やキャッシュフローのファンダメンタルズに関連しない要因が市場を左右する局面もあります。ボトムアップを重視していることから、マクロやトップダウンが重視される局面は、リターンに対する逆風を生み出す可能性があるものの、これらは株価を左右する要因として一時的なものに終わる傾向があります。

一般的なポートフォリオ・リスク

キャピタル・リスク - 投資金額は変動し、元本は保証されません。ポートフォリオの基準通貨と申し込み通貨が異なる場合、投資金額は為替レートの変動による影響を受けます。

ESG及びサステナビリティ・リスク - ポートフォリオの投資価値や運用実績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

株式リスク - 株式は一般に債券やマネー・マーケット商品よりもリスクが高くなります。

地理的集中リスク - ポートフォリオが特定の地域にその資産の大部分を投資する場合、そのパフォーマンスはその地域で生じる事象の影響をより大きく受けることになります。

ヘッジ・リスク - ヘッジを通して特定のリスクを軽減または排除しようとする試みが、意図したとおりに機能しない場合があります。

投資ポートフォリオ・リスク - ポートフォリオに投資する場合は、市場に直接投資する場合とは異なる特定のリスクが生じます。

運用リスク - 運用会社またはその指名を受けた者にとって、あるポートフォリオに対する義務と他の運用ポートフォリオに対する義務とが時として相反する場合があります(ただし、このような場合はすべてのポートフォリオが公正に取り扱われます)。

オペレーショナル・リスク - オペレーション上の失敗によって、ポートフォリオ運営における混乱や金銭的損失が生じる可能性があります。

重要情報

当資料は、ティー・ロウ・プライス・アソシエイツ・インクおよびその関係会社が情報提供等の目的で作成したものを、ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社が翻訳したものであり、特定の運用商品を勧誘するものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。当資料における見解等は資料作成時点のものであり、将来事前の連絡なしに変更されることがあります。当資料はティー・ロウ・プライスの書面による同意のない限り他に転載することはできません。

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当社の運用戦略では時価資産残高に対し、一定の金額までを区切りとして最高1.265%(消費税10%込み)の逓減的報酬料率を適用いたします。また、運用報酬の他に、組入有価証券の売買委託手数料等の費用も発生しますが、運用内容等によって変動しますので、事前に上限額または合計額を表示できません。詳しくは契約締結前交付書面をご覧ください。

「T. ROWE PRICE, INVEST WITH CONFIDENCE」および大角羊のデザインは、ティー・ロウ・プライス・グループ、インクの商標または登録商標です。

 

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