2022年2 月 / インサイト

ウクライナ情勢が市場に及ぼす影響

インフレへの対処において中央銀行はより難しい状況に直面する

サマリー

  • サプライチェーン問題およびインフレ圧力の高止まりは長期化し、中央銀行による経済のソフトランディングという課題はより達成が難しくなる。
  • 当面、先進国の中央銀行は金融引締めを進める見込みだが、より長期の金融政策という点では不透明感が増している。
  • 金融市場では変動性が高い状況が継続し、市場が混乱する可能性がある。

ウクライナ情勢への市場の反応について教えてください

市場はロシアによるウクライナ侵攻に対し、非常に合理的な反応を見せており、制裁により直接影響を受けている、または更なる制裁により影響を受ける可能性のある銘柄に焦点を当てています。

ロシアによる侵攻が一時的なものとなる可能性は低く、サプライチェーン問題やインフレ圧力の高止まりがより長期にわたり続くことを意味します。既に原油価格は高騰しており、今後はウクライナとロシアで生産される穀物や資源価格にも影響が及ぶと考えています。

紛争前の債券運用戦略においては全般的にリスクを低位に抑制しており、今後数ヵ月の間に訪れる可能性がある市場の混乱にも対応可能です。ウクライナ情勢の緊迫化以前より市場の変動性は高まっており、今回の紛争によって変動性は更に高まると見ています。

市場の混乱を想定し、積極的に対処できるように備えています。

紛争による世界経済への影響についてどのように考えていますか

今回の紛争によるより広範な影響の中で、世界中の投資家は今後サプライチェーン問題とインフレ圧力を最も注視するでしょう。今回の紛争によって、各国中央銀行が直面しているインフレ圧力への対処と経済のソフトランディングはより一層困難となることはほぼ間違いありません。

紛争以前、多くの先進国の中央銀行は近い将来に金利引上げに動くと見られていました。例えば、米連邦準備理事会(FRB)は2022年3月に利上げを開始すると予想されていました。

しかし、ウクライナ情勢の緊迫化により、金融政策の不透明感が増したことで、ただでさえ達成が難しい経済のソフトランディングが困難となっています。

現時点においては、中央銀行は計画通り金融引締めを進め、2022年3月に利上げを開始すると予想されています。ただ、より長期の動きについては見通すのが難しく、紛争の進展に依存する可能性が高いと見ています。

今後を見通す上で、どういった点に注目していますか

状況の更なる緊迫化をもたらす可能性があり、注視している事項は以下の通りです。

  1. ロシアのガスや原油の輸出に係る進展
  2. ロシアはNATOの条約を尊重する姿勢を示してきたが、これが少しでも変化するようであれば懸念に値する

より長期の債券市場見通しはどのようなものですか

紛争前、金利は上昇しており、クレジットスプレッドは若干拡大していました。中央銀行がコロナ禍下を通じて維持してきた超緩和的金融政策の解除に踏み切り始めていたという事実に基づく論理的な動きと言えます。

経済成長やインフレに係る統計は非常に力強い景気回復を示していたため、これが中央銀行の政策転換を招き、その結果、変動性が上昇しました。このような状況では市場が混乱し、買いの好機が訪れる可能性があります。

近年において、2.0~2.5%の範囲で推移する米国債利回りと約500bpというハイイールド債のスプレッドは非常に魅力的なものでした。2022年にこの水準に到達すると想定しており、債券への投資意欲が増すと考えています。

 
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