2022年2 月 / グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境
グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境 2022年2月号
1. 市場見通し 2022年1月31日時点
- 世界経済は減速する見通しだが、依然としてトレンドを上回っている。インフレ高止まりが引き続き逆風となっているが、インフレ圧力は中央銀行の金融引締めやサプライチェーンの改善に伴って次第に弱まる見込み。
- 先進国の中央銀行は引き締め前倒しに動いており、米連邦準備理事会(FRB)はバランスシート縮小を継続し、3月に利上げを行う見込みで、欧州中央銀行(ECB)も資産購入ペースを縮小している。一方、日本銀行は現状維持。新興国の中銀は引き締めのピークに近づいている可能性もあるが、中国は連続的に金融緩和を行うなど、逆の対応を行っている。
- 中銀の引き締めに伴い短期金利が上昇する一方、長期金利は景気減速とインフレ高止まりの綱引きに左右される展開。
- グローバル市場の主なリスクには、中央銀行の政策ミス、インフレ圧力の高止まり、地政学リスクの高まり、コロナ変異株の出現、中国経済の成長スピード等が挙げられる。
2. ポートフォリオ・ポジショニング 2022年1月31日時点
- 株式は、足元のピークから調整しているが、依然として割高なため、アンダーウェイトを継続。インフレ高止まりと賃金上昇が企業の利益率や利益成長を圧迫する可能性が高い。
- 株式では、引き続き景気敏感銘柄を重視し、バリュエーションがより妥当な水準にあり、景気回復継続から恩恵を受ける世界のバリュー株、米国小型株、新興国株のオーバーウェイトを維持。
- 債券配分においてはデュレーションが短く利回りの高いセクターを引き続き選好。短期インフレ連動債、信用ファンダメンタルズが依然良好な変動金利バンクローン、ハイイールド債をオーバーウェイト。
3. 市場テーマ 2022年1月31日時点
パウエル議長の舵取りに注目
株式市場はFRBのタカ派転換と年内に5回以上の利上げを行う可能性を織り込み、2009年以来最悪のスタートを切りました。株安を主導しているのはハイグロース企業、特にテクノロジーや一般消費財セクターで、その多くはコロナ禍による消費者行動の変化による恩恵を受けて昨年、高水準なバリュエーションまで上昇した銘柄です。最近の市場の弱さにも怯むことなく、パウエルFRB議長は1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で労働市場の強さと高インフレに言及し、積極的な緩和政策解除の意向を繰り返し表明しました。米国10年国債利回りは今年既に0.40%以上上昇しており、それに追随して住宅ローン金利も0.50%近く高騰し、その影響は実体経済にも及んでいます。FRBは積極的な引き締めに動きそうですが、イールドカーブはフラット化しており(図表1)、市場は景気への潜在的影響を懸念している様子で、パウエル議長の舵取りがうまく行くか疑問視しています。
中国は経済危機回避に全力
2021年は波乱の展開でしたが、中国は政策サポートの強化や規制強化緩和の兆しが見られ、投資家は今年持ち直すと期待していました。ところが、厳しいゼロ・コロナ政策などの影響で2022年は景気減速の兆しが見られています(図表2)。株式市場が年初から8%近く下げ、投資家心理が悪化しており、不動産関連の債務問題が尾を引く社債市場も底値模索の状況が続いています。こうした状況に対処すべく、中国の政策当局は貸出金利や預金準備率の引き下げなど金融政策の緩和に早くも動き、不動産セクターにおいては価格安定のため住宅ローン促進などのテコ入れに乗り出し、さらなる支援策も実施される可能性があります。中国は冬季五輪を開催中で、習近平主席が前代未聞の3期目を目指しているため、政策当局は今年、何としても経済危機を回避しようとするでしょう。
上昇する国内の物価と金利
諸外国ほどではないにせよ、日本国内でも物価が上昇しています。日本銀行も、1月に開催した金融政策決定会合の「展望レポート」で2022年度の物価上昇率見通しを1.1%に引き上げました(前回2021年10月時点は0.9%)。ただし、米国のインフレ率に比べれば依然として低い水準であり、年内に累次の利上げが予想されている米国に比べ、日本では金融緩和の解除も先のことと想定されるため、為替市場ではドル円相場が上昇圧力を受けやすく、それがグローバル由来のインフレ要因に追加される形で日本国内の物価上昇に跳ね返る循環が生まれているようです。この物価上昇に加え、海外の金利上昇の影響から、国内債券の利回りも超長期ゾーン主導で上昇しています(図表3)。こうした環境下では、国内債券のアンダーウェイト、金利上昇の恩恵を受けやすい金融などバリュー株、バリュエーション調整圧力を外国株よりも受けにくい日本株、あるいは金融政策サイクルが米欧と異なる新興国株のオーバーウェイトなどが有望と考えています。
4. 各国・地域の経済環境
5. アセット・アロケーション・コミッティのポジショ二ング
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